すがブログ

聖地巡礼とか各期のアニメ振り返りとか書きます

中野四葉というキャラクターについて

中野四葉は「元気いっぱいで人なつっこく、人から頼まれると断れない性格」と、アニメ公式サイトの登場人物一覧ページにあります。
この説明の通り、四葉は1話から元気溌剌・天真爛漫・笑顔満開で、大きなリボンがチャームポイントのキャラクターとして登場します。
そんな四葉が登場する「五等分の花嫁」という作品について、簡単に説明しておきます。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』5巻表紙

 

 

「成績優秀だが貧乏暮らしの主人公・上杉風太郎と険悪な出会い方をした女の子が実は転校生で、勉強嫌いの彼女の家庭教師となって勉強を教えることに…」というさして珍しくない設定から物語は始まります。
この作品において特徴的なのは、やはりそのヒロインが5人いて「五つ子の姉妹」である点でしょう。
長女としてみんなのお姉さん的存在を保ちながら、だらしない一面もある一花。
姉妹愛が強く、言いたいことはハッキリ口に出す真っ直ぐで苛烈な次女、二乃。
クールでミステリアス、戦国武将好きだがそれを隠している大人しい三女、三玖。
物語の開幕で主人公と出会った、真面目・頑固・食いしん坊と属性盛り盛りの五月。
そんな四人に四葉を加えた5人がヒロインの恋愛漫画「五等分の花嫁」ですが、これはよくあるハーレム系ラブコメとは一線を画しており、卓越した描写と張り巡らされた伏線をもとに「誰がラストで主人公と結ばれるヒロインなのか?」を推理する、サスペンス漫画のような一面も持っています。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』2巻キャラクター紹介

 


作品全体の説明はこのくらいにしておいて、本題である四葉の話をしましょう。
とかく、四葉は序盤から「困っている人を放っておけず、献身的で他人のために行動するお人好し」として描かれます。
1巻2話では他の姉妹が風太郎の家庭教師就任を拒絶するなか一人手を差し伸べますし、いろんな生徒や先生の頼みを引き受けているシーンもよく出てきます。また、5-6巻の「七つのさよなら編」ではテスト前にも関わらず陸上部の助っ人を断りきれず悩むというエピソードもありました。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』1巻2話

 

 

しかしこの極端な利他精神は、過剰な自己犠牲・自身に対する否定と隣り合わせになっていることが徐々に明るみになってきます。
象徴的だったのが5巻36-37話の「勤労感謝ツアー」で、風太郎が日頃の感謝を込めて四葉に何か欲しいものはないかと尋ねるも、浮かんでくるのは姉妹のためのものばかりで自分が欲しいものがわからない、という一節があります。それ以外の回でも、他の姉妹は将来の夢について語るシーンがある中、四葉だけはなかなかそれが見えてきませんでした(9巻79話など)。
この原因の一角が明かされたのが7巻56話の「最後の試験編」でした。実は四葉が転校してきたのは前の学校で自分だけが落第したためであり、「自分を一人にさせないために5人全員で転校する」という選択を他の姉妹たちに取らせてしまったことについて、「みんなの足を引っ張ってしまった」と強い負い目を感じているということが語られます。
この事実を風太郎に告白した時の四葉の表情は、笑顔を保ちながらも強烈な影が差していたのが印象的です。
このエピソードは最終的に5つ子同士がお互いの得意分野を教えあうことで全員赤点回避し、自身もそれに貢献できたことから「初めて報われた気がします」と涙を流すシーンで締めくくられるのですが、四葉の抱える心の闇の一部が少しだけ氷解した瞬間として非常に感動的なものでした。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』7巻56話

 

 

物語が進むにつれて一花・二乃・三玖とヒロインたちが次々に風太郎への好意を表していく中、四葉はなかなかそのような描写がありませんでした。
それどころか9巻72話では、クラスの人に風太郎との恋仲を噂されて「ありえません」と真顔で一蹴したり、もし風太郎に好きな人ができたら全力で応援する旨の発言をしたりと、フラグが全く立っていないかのようにも見えました。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』9巻72話

これを「あくまで自分の悩みの一部を解決してくれた家庭教師として好感度が高いだけであってまだ恋情は抱いていない」と見るか「既に恋愛感情を抱きつつあるが、姉妹への負い目からそれを押し殺している」と見るか議論が分かれていましたが、11巻の過去編ですべてがひっくり返されることになります。

 

 

 

 

本作では序盤から「風太郎が幼い頃に名前も知らない女の子とある約束をしており、実はそれが五つ子の誰かである」ということが示唆されていました。
11巻ではこの「約束の女の子」が四葉であったことが、それまでの10巻分に散りばめられた伏線を鮮やかに回収しつつ明かされました。
当時シングルマザーで家計が苦しかった中野家と、やはり貧しい暮らしを送っていた上杉家。似た境遇にいた二人は、「お互い勉強を頑張って将来稼げるようになり、家族に不自由ない暮らしをしてもらう」という目標を立て、存在価値のある・必要とされる人間になることを誓います。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』11巻88話

この過去編により、「四葉風太郎に恋愛感情を持っているのか」という議論は、そもそもの前提から覆ります。フラグは物語が始まる遥か前から既に立っており、1話の時点でもう風太郎に対して強い気持ちを抱いていたことになります。
この視点を持って序盤のストーリーに立ち返ると、ただ底抜けに明るいおバカキャラだと思われていた四葉の発言・行動が、全く違う意味を持ったものに見えてきます。3巻21話では、ギャグ調の展開のラストで風太郎のことを好きだというシーン(即座に冗談だと否定する)がありますが、この時の四葉の心情も推して知るべしといったところでしょう。

 

 

また、過去編では同時に四葉の持つ闇の全貌が明かされます。
当時の五つ子は常人では見分けがつかないほど見た目もそっくりだったのですが、そもそも四葉が五つ子であることを知らなかった風太郎は、一花を四葉と思い込んで接してしまいます。判別してもらえなかったトラウマから「自分は他の姉妹とは違う、五つ子の中で特別な存在になりたい」と強く願うようになり、風太郎との約束を果たすため「姉妹の中で最も優秀になること」を目指しました。
しかし成績は伸び悩む上、さらに母親が亡くなり、引き取り手の新しい父親(医者)に裕福な暮らしを提供してもらったことから、徐々に勉強する目的を見失ってしまいました。代わりに「いろんな部活の助っ人を引き受けて活躍する」ことで他の生徒に褒められ、特別でありたいという承認欲求を満たすようになった四葉は、部活にかまけるあまり益々成績が低下する悪循環に陥り、ついに前述の落第事件へと繋がっていきます。
「他者から必要とされる」魅力に取り憑かれてしまった彼女の邪悪な笑顔は、なんとも痛々しいものでした。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』11巻89話

「姉妹とは違う特別な存在」になることを追い求め続けた結果、皮肉にも自分だけが落第し学校を去るという形で「一人」になってしまいます。最終的には5人全員で転校するという話で落ち着きましたが、この一件で完全に鼻を折られた四葉は、反転して「自分は特別であってはならない」「他の姉妹のことを何よりも優先しなければならない」という念に囚われた過剰な自己犠牲モンスターに成り果てました。

 

 

このような背景を経て、物語は転校初日の第1話に繋がります。初対面かと思われたシーンは、実は「約束を守って勉学に励み続け優等生になった風太郎」と、「目標を見失い迷走したあげく落第し、姉妹を巻き込んで転校してきた四葉」という対照的な2人の再会だったのです。
四葉側はそれに気づいてましたが、醜く変わり果ててしまった自分の現状を思うと打ち明けられません。「もし家庭教師である風太郎の指導を受けて成績が持ち直し自信がついたら、明かせるかもしれない」という仄かな希望も浮かんだものの、一花や三玖らが風太郎に惚れ始めていることに気づいてしまい、「他の姉妹を優先する」という自らに課した枷に縛られて動けなくなってしまいました。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』11巻90話

日に日に募っていく「風太郎の特別な存在になりたい」という思いと、黒歴史により背負った「自分は特別であってはならない」という呪いの葛藤に苦しみながら、表面上は元気溌剌・天真爛漫・笑顔満開でいろんな人を助けるお人好しキャラを貫くという歪な存在、それが中野四葉の正体でした。

 

 

そして舞台はクライマックス、3日間の文化祭編に突入します。
学級長である風太郎と四葉には、設営準備や屋台の安全点検など様々なタスクが課せられました。ただでさえその負担が大きい中、四葉は持ち前の奉仕精神で演劇部公演の助っ人やクラスメイトのバンドのステージ出演手配など、追加でいろいろな仕事を引き受けます。
みんなが祭りを楽しめるようにと東奔西走する四葉でしたが、文化祭一日目にボヤ騒ぎが起き、火元の屋台が出店停止処分になってしまいます。自分の安全点検が甘かったせいだと責任を背負い込んだ四葉は夜も眠れず、さらには罪悪感から二日目の他の実行委員の仕事を肩代わりするなど、自ら仕事を増やすという自罰行為に及びます。心身ともに疲弊した状態で己に鞭打ち続けた四葉はついに限界を迎え、過労で意識を失い病院に搬送されてしまいました。
病室で目を覚ました四葉は、自分が倒れたせいで仕事に穴を開けさらに多くの人に迷惑をかけてしまったと酷く落ち込みます。病院を飛び出して謝罪回りに行こうとした四葉でしたが、風太郎はそれを引き止め、四葉が抜けた後もいろんな人の尽力により文化祭がつづがなく進んだことを明かしました。
四葉の穴を埋めたのは、今まで四葉に助けられた数多の生徒たちでした。「こいつらは全員お前の世話になった奴らばかりだ。お前のせいで、じゃない。お前のために集まったんだ」という風太郎の言葉は、これまでの四葉の自己犠牲精神による人助けが決して無駄ではなかった、他人のために献身的に行動する生き方は決して間違いではなかったのだという救いの言葉でもあったと言えましょう。五等分の花嫁という作品において、最も好きなシーンの1つです。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』13巻108話

翌日、復帰した四葉は人気のないところでうたた寝をしている風太郎を見つけます。そして「約束の女の子」としての口調で独白するように、約束を守れなかったことを謝りました。夢うつつの風太郎は昔のことより大切なのは今だから気にするなと寝言のように答えます。それを受け取った四葉は過去の思い出を断ち切ることを心に決め、「これが最後」と言いながらとびきりの笑顔を見せて眠ったままの風太郎に口づけをしました。
その場を去った四葉は「これで私も前に進める気がする」と呟きますが、その言葉とは裏腹に大粒の涙が流れていました。どれだけ諦めようとしても、風太郎への想いは心から消えてくれなかったのでしょう。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』13巻108話

 

 

13巻113話にて、遂にヒロインレースは決着します。
実は文化祭初日の時点で風太郎は、五つ子全員を大事に思っており、その上で最も特別な一人を選んで文化祭最終日に告白すると5人の前で宣言していました。それに対し、5人はバラバラの場所でそれぞれ風太郎を待っていること、そして選んだ特別な一人の待つ場所に来てほしいことを風太郎に告げました。
そして迎えた最終日の夜、風太郎が訪れたのは四葉のところでした。ところが四葉は、自分が選ばれたことに対する驚きや喜びと、自分は特別な存在になってはいけないという呪縛で感情がぐちゃぐちゃになり、その場から逃げ出してしまいます。
風太郎は必死に追いかけますが、あと一歩で追いつきそうというところで派手に転倒してしまいました。それを見て思わず立ち止まった四葉に、風太郎は語りかけます。
五つ子全員が大好きなこと、みんなの家庭教師をやれたのを誇りに思っていること、そしてそう成るに至ったのは四葉のおかげであること。序盤も序盤の第2話にて、5人の中で最初に風太郎を受け入れたのは四葉でしたが、今思えばそこが分岐点だったのかもしれません。
「俺は弱い人間だからこの先何度もつまずき続けるだろう。こんなだせぇ俺の勝手な願いなんだが、その時には四葉、隣にお前がいてくれると嬉しいんだ」と続く言葉は、風太郎の中で四葉がいかに大きな、なくてはならない存在となっているかを雄弁に物語っていると言えるでしょう。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』14巻114話

この特大の愛の告白を受けて、四葉は一瞬、悩みます。自分が特別になってはならない。ここで断ち切らないといけない。嫌いだと言わなければならない。そんな思考がグルグルと脳内を駆け巡る中、口をついて出たのは「好きです」という言葉でした。
長い間恋い焦がれ続け、どうしようもなく膨れ上がった自分の気持ちに、やはり嘘はつけませんでした。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』14巻114話

 

 

14巻119話、姉妹にすべてを話し互いに納得いく形で関係性を清算した四葉風太郎は二人でデートに出かけるのですが、その最後で「ブランコのある公園」を訪れます。このブランコは5巻37話で最初に登場し、四葉が「ちょっと落ち込んだ時に乗ってみたり…」と言及していたものですが、その後も過去編などで四葉が悩みを抱えネガティブな感情を吐露するときに乗っているシーンがたびたび見られました。このブランコのチェーンは、「自分は特別であってはならない」と自らを縛る「鎖」のメタファーとして描かれていたように思います。
そのブランコに乗った風太郎は、そこから離れたところにいる四葉の元まで跳んで行けたら聞いてほしい話があると宣言、最大出力のジャンプをかますために全力で漕ぎ始めます。限界まで勢いを着け跳ぼうとした瞬間、チェーンは壊れ、風太郎は四葉のところまで投げ出されました。そして立ち上がり、四葉に向けて手を差し伸べると、勢いよく結婚を申し込みました。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』14巻119話

段階を飛ばしすぎだと驚く四葉ですが、「鎖」から解き放たれた彼女の答えは言うまでもなく決まっていました。
この記事の序盤で、四葉だけは将来の夢が見えてこないと記述したかと思います。なかなか明かされなかった四葉の夢、それは何を隠そう「お嫁さん」でした。
「上杉さん、約束ですよ。いつかきっと、私の夢を叶えてください」という四葉の言葉とともに、このお話は締めくくられます。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』14巻119話

 

 

 

 

さて、ここまで中野四葉というキャラクターについて語ってきましたが、皆様もお気付きの通り、11巻(過去編)を読む前の四葉と読んだ後の四葉は、もはや別人と言えましょう。
自分は過去を知る前から四葉推しではあったのですが、すべてが明らかになった後はますますその魅力に落ちました。「5人のヒロインレースの中で一番に推せるキャラ」から「これまで読んだ全漫画の中でも屈指の推しキャラ」になったような感じです。
「社交スキルが高く周囲との調和を大事にする性格ながら、肥大化していく利己的な感情との矛盾に葛藤し、それでも表面上はそのキャラクターを貫く」というのが性壁だと自負しているので、まぁ順当に自分の心を撃ち抜いてきましたね…「最も曇り顔が似合う女」と評されるだけのことはあります。

世間一般で見るとやはり二乃や三玖の人気が高いようですが、俺ガイルの由比ヶ浜結衣然り、ぼく勉の古橋文乃然り、やはり自分はどうしようもなくこの手のキャラが好きみたいです。

 

 

最後にオマケとして、ファンブログや各種掲示板で見かけた四葉に関する考察の中で「これは気づかなかった…」「仕込みすごい…」と感心したネタを載せていきます。

 

 

・茎
掲示板にて、四葉は「茎」という別称をつけられています。その由来を説明しますと…
四葉のキャラデザで特徴的なのは、何と言っても大きな緑色のリボンかと思います。そのリボンの先が上側に2本・下側に2本広がっていることから、それが4枚のクローバーの葉をモチーフにしているのではないかなということまでは多くの人が思い至るところでしょう。
その4枚の葉をそれぞれ一花・二乃・三玖・五月に見立てると、リボンの下にある四葉は茎の部分にあたります。4人の姉妹の幸せを最優先として自分を犠牲にする四葉は、さながら幸運の象徴とされる4枚の葉に養分を送り続けるためだけに在る「茎」のようだというのです。
四葉の精神性をたった一文字で的確に説明した見事なあだ名で、知った当時はめっちゃ笑っちゃいましたが、掲示板でも言われてるように最初にこの発想に至った人はやっぱり人の心がないと思います。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』10巻81話

 

・大根役者
四葉は演技が下手」という設定は、序盤からたびたび出てきました。3巻21話では二乃と五月を引き止めるために風太郎が病に冒されたと嘘をつきますし、5巻37話では試着室で風太郎と二人でいるところを一花と三玖に見つからないようごまかそうとしますが、どちらも明らかに棒読みでとても騙しきれるようには見えません。また8巻64話では五月の変装をあっさり風太郎に看破されますし、文化祭編でも演劇部の舞台に助っ人キャストとして出演することを風太郎に心配されています。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』8巻64話

これらの描写から四葉の大根役者っぷりは基本設定として疑っていなかったのですが、13巻107話にて、助っ人出演した舞台での演技を絶賛されるというシーンがありました。また12巻98話でも、四葉の演技力を低く見積もっている風太郎の言葉に三玖が疑問を呈するという場面があります。そして前述した21話と37話を改めて読み直すと、読者や風太郎の目には明らかに嘘とわかるように描かれていますが、結果的に二乃・五月・一花・三玖と全員に対して騙し通すことに成功しているのです。
そろそろお分かりかと思いますが、「四葉風太郎に対してだけ演技が下手」というのが正解と考えていいでしょう。11巻90話では「最近知ったんだけど、私嘘つくの下手みたいで…」というセリフがありますが、裏を返せば「最近まで(=風太郎に会うまで)は嘘を見破られたことは少なかった」ということになります。
なんなら、四葉本人も文化祭クライマックスの告白シーンでこう言ってましたね。「私…上杉さんには嘘をつけません…」と。

 

 

・五つ子ゲーム
4巻24話にて、隠した手から伸びる指がどれかを当てる「五つ子ゲーム」が行われていました。単純に姉妹の並びで一花=親指・二乃=人差し指・三玖=中指・四葉=薬指・五月=小指と当てはめられていました。また4巻32話で、寝込んだ風太郎の左手の指を1本ずつ掴むシーンがありましたが、これも前述と同じ対応関係になっています。
結婚指輪をはめる薬指に対応していた四葉が花嫁になるのは、ある意味必然だったのかもしれません。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』4巻24話

 

・ブランコの鎖
こちらは本筋でも少し言及しましたが、四葉が落ち込んだときに乗るブランコのチェーンは「自身を縛る鎖」のメタファーになっています。実はこれは結構あからさまに描写されている箇所があって、7巻56話で風太郎が四葉の異常な自己犠牲の精神を知るシーンで、例のブランコのチェーンと似たような「鎖」が描かれてるんですよね。
花嫁に選ばれることに加えて、この鎖を壊すことが四葉ルートの完璧なエンディングだったと言えるでしょう。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』7巻56話

 

 

・病院のシーンで微笑んでいたのは誰か
5巻34話、入院している風太郎が「約束の女の子」について五月に話すシーンがあります。そして11巻90話にて、四葉が病室の外でこっそり盗み聞きしていたことが明かされるのですが、それを踏まえると34話にてあたかも五月が微笑んでいるかのように描かれていたとあるカット(画像左上)が、実は四葉の顔であったことがわかります。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』5巻34話

 

 

・428服
四葉はよく「428(よつば)」とプリントされた服を着ています。確認できるだけで2話、35話、49話、56話、62話など…。当初は「アホすぎて自分の名前を数字の語呂合わせにした服を着ている」というネタだと思っていました。しかし過去編の「自分を判別してもらえなかった」というトラウマから姉妹との差別化を求めるようになったというエピソードの後に見ると、「自分が四葉であると一目で判別してもらえるようになりたい」という悲痛な叫びにも思えてきます。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』1巻2話

 

 

・14巻表紙
コミックス14巻は画像のように姉妹5人の集合絵が表紙になっていますが、これがちょっとしたネタバレになっているようです。タイトルの「五等分の花嫁」の「五」の文字が五月の上に重なるようになっていて、彼女の頭文字を表しているように見えますね。ところで、四葉の上に重なっている文字はというと…。

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出典: 春場ねぎ『五等分の花嫁』14巻表紙